ユネスコ無形・有形文化遺産の宝庫 アナトリアの豊かな歴史・建築・文化を巡る旅
歴史の上で、古代文明の本拠地として栄えたアナトリアの地は、歴史的・建築的・文化的遺産の宝庫で、現代でも訪れる人々に特別な体験を提供しています。例えば、中央アナトリア地方北西部に位置するエスキシェヒルは、トルコ民話の登場人物のナスレッディン・ホジャの出身地として知られています。2022年にユネスコ無形文化遺産にも登録されたナスレッディン・ホジャは、トルコで語り継がれる何千もの機知に富んだとんち話や笑い話に登場する人物で、そのほとんどが教育的な性格を持つことで知られています。毎年7月に「ナスレッディン・ホジャ フェスティバル」が行われており、今年は、7月5日(金)~7月10日(水)に開催予定です。
アナトリアには無形文化遺産だけでなく、有形文化遺産も数多く登録されており、トルコ国内で21番目のユネスコ世界遺産として、「中世アナトリアの木造多柱式ジャーミィ」が昨年新たに追加されました。13世紀後半から14世紀半ばにかけてアナトリアに建てられた下記の5つのジャーミィを含む、トルコ・イスラムの伝統に基づく建築物で構成されており、 木造の内部柱(ハイポスタイル・タイプ)や当時の美的感覚を反映した装飾など、技術的な特徴が共通しています。
ベイシェヒル・エシュレフオール・ジャーミィ(コンヤ県)
12世紀から13世紀にかけて、コンヤはセルジューク朝の首都でした。1296年から1299年の間に建てられたベイシェヒル・エシュレフオール・ジャーミィは、セルジューク朝時代の石造りや木造建築の素晴らしさを伝えるアナトリア最大の木造ジャーミィで、石、レンガ、カラフルなタイル細工など、複数の装飾芸術を取り入れています。
アフヨンカラヒサール大ジャーミィ(アフヨンカラヒサール県)
フリギアからオスマン帝国までの文明を受け入れてきた、コンヤの隣町アフヨンカラヒサールには、町で最大のジャーミィのひとつであるアフヨンカラヒサール大ジャーミィがあります。セルジューク朝時代に建てられ、その時代の建築様式と木工細工が見事に融合しています。40本の木製の柱が5列に並んでいることから、「40本の柱モスク」とも呼ばれています。
シヴリヒサール大ジャーミィ(エスキシェヒル県)
エスキシェヒルは、歴史的な面と近代的な面を併せ持つ印象的な都市です。エスキシェヒルのシヴリヒサール大ジャーミィは、アナトリアでも最大級の木造円柱ジャーミィです。2,500人の礼拝者を収容できる室内では、素晴らしい織物のシヴリヒサール絨毯を見ることができます。また建物内部の67本の柱には、鉛筆の装飾が施されたものや、東ローマ時代の柱頭を持つものもあります。このジャーミィはまた、クルミの木で作られたミンバル(説教壇)が有名で、この種の中で最も美しいものの一つとされています。
アヒ・シェラフェッディン・ジャーミィ(アンカラ県)
エスキシェヒルから高速列車で1時間半のアンカラにあるアヒ・シェラフェッディン・ジャーミィは、その簡素な外観とは裏腹に驚異的な建築物です。セルジューク朝時代の建造物であるこのジャーミィは、霊廟の内壁に大理石のライオン像があることから、アルスランハネ(ライオンの家)としても知られています。木造の24本の柱と大理石の柱頭が特徴的な平屋建てのジャーミィは、スポリア*と木材の調和を例証しています。
*スポリア:西洋建築において古代の建物から他の建物に転用された円柱などの要素や建材
カサバキョイ・マフムット・ベイ・ジャーミィ(カスタモヌ県)
カスタモヌにあるカサバ村のマフムット・ベイ・ジャーミィは、カンダロウルラルの時代に建てられ、金属の釘を使わない独特の重なり合った構造から、「釘のないジャーミィ」 として知られています。この建物の一番の特徴は、芸術品と呼ばれる美しい王冠の門で、トルコではこのタイプの例は非常に少なく貴重なため、カスタモヌ民族学博物館に収蔵されています。